空手のあり方が問われていると思います。
【少年部の試合で行われた反則行為】
11月3日に行われた『第6回全九州フルコンタクト空手道選手権大会』において、組手試合の最中、反則行為による後頭部への攻撃により、相手選手が負傷。昏倒するという事態が発生しました。
かなり時間が空いていますので、事故の概要は皆様の知るところであると思います。
では、この大事件はなぜ起こったのか?
それはひとえに『武道のスポーツ志向』にあると思います。
まずは、当事者のことです。
反則選手の所属していたのは九州を本拠地としている団体『実戦空手 勇征会』
かなり地元では評判が良かったと言われ、とりわけ礼儀を重んじることで有名だったとか。
しかし、実際の試合ではセコンドについていた支部長が「行け!」と少年選手を煽り、試合では有り得ない背を向けた相手への攻撃を行ってしまったのです。
それも、人体の中でも絶対的な急所である後頭部へのハイキック――――上段回し蹴りです。
相手は昏倒。
その間、近くの大人たちは何をしていたか?
審判団は集まり『試合の結果』について議論していたとか。
数メートル先には、子供が倒れているにも関わらずです。
結局、試合自体は反則負けと判定が下りましたが、倒れた選手の親御さんが救急へと連絡をして運ばれていった……大人たちは悔い改めるべきだと思います。
その後、当然ですが炎上。
『勇征会』は11月11日に公式サイトにて、反則行為とそれにより相手が怪我をした事実を認め、謝罪。
相手選手の治療にかかる費用は、勇征会が負担することも発表されていました。
ですが事態は収まらず、命令を出したとされる支部長はセコンドや引率などの役目からは排除され無期限の謹慎。本人のモノとみられるX(旧Twitter)のアカウントは鍵がかかった状態になりました。
ここから何が起こったのか……私たちネットに深くから携わっている人間ならば分かります。
反則行為を行った選手への批判、そして勇征会へのバッシング。
果てには蹴られた側の被害者にも、少なからず非があるという意見も散見されました。
遂には11月13日には勇征会が『弊会所属選手及び関係者、弊会に対する誹謗中傷及び誤った情報の拡散、嫌がらせ行為等に関する対応について』という声明文を出しました。
よほど、叩かれたものと見受けます。
このような行為に関しては「法的措置を進めていく」と明言しました。
しかも、反社会的勢力との関わりがあるとすら誤情報が流されているらしく、勇征会の被った被害は大きいと思います。
ネットで叩くのが大好きな方は反省してください。
そして――――最も反省すべき方々がいます。
それは、大人たちです。
前提条件として、試合の所作が武道を嗜んでいる者から見て、間違っていると推測できます。
審判の「待て」の声や、相手が背を向けている状況。
それらを総合的に判断すれば『今は攻撃してはいけない時間なのだ』と分かるはずです。
そして分かっていなければいけないのが、セコンド、そして指導者であると思います。
子供が慣れない試合場で困惑するのは当然です。
その子供に対して「行け」と言うのは混乱を招きますし、常日頃から指導をしなければいけません。
実戦を謳っているのであれば、尚更です。
ケンカで背を向けている無防備な相手の頭を蹴る……ありますか?
ここで、話しは戻ります。
空手に限らず、武道がスポーツ志向――――更には『勝利偏向主義』となっていることが関係していると思います。
「勝てればそれでいい」「強い者が正しい」
それは『武』ではありません。
単なる『暴力』です。
親は何を期待して、空手の道場に大切な我が子を預けるのでしょうか?
入会・月謝・必需品など、少なくない出費をしてでも子供に何を学んでほしいのでしょうか?
それは『武』の『道』です。
具体的に言えば『礼儀正しさ』『いじめられない心と体』『自信をつける』等でしょう。
正解はない世界にも思えますが、かの大山倍達氏(極真空手の創設者)はこう述べています。
「力なき正義は無力なり、正義なき力は暴力なり」
この言葉は少なくとも正解を探し出すキーワードになるでしょう。
子供に『乱暴者』になってほしい親は?
我が子に『いじめ加害者』になってほしい親は?
空手だけの問題ではない。
柔道も剣道も……武道が何を求めているのか……
道の先にあるものが『絶対的に他者を潰す力』なのであれば、それは悪です。
実際に、そうなってしまったとも言えるのが、この度のセコンドによる「行け!」だったのではないでしょうか?
優勝は経験になる。
しかし、毎日の稽古以上の経験はそうそうないはず。
なのに、世間から誹謗中傷や特定行為をされて学校に行けなくなってしまう……
こんなの、武道にあってはいけんでしょう。
審判団もそうです。
なぜ、子供の安全よりも『試合の成立』にこだわったのでしょうか?
是非とも、自分の締めている帯の色を今一度見て、胸に手を当て考えてほしいところです。
最後に、再発防止に努めている関係各社及び他団体の皆様には頭が下がる思いです。
私も空手の道を歩んでいる者として、道のゴールを見失わないようにしたいです。
押忍。
KAI