【12月3日韓国大統領尹錫悦氏は、韓国国内に対して戒厳令を宣言した】
一夜で終わったこの大騒動は、一体なぜ起こってしまったのでしょうか?
広く浅く見てみましょう。
なぜ?非常戒厳令の発令とは?
まず、非常戒厳令の概要を見てみましょう。
2024年12月3日、韓国のテレビ放送局YTNにて、尹錫悦大統領は演説を行いました。
その際に【戒厳令】を宣言しました。
【戒厳令】とは、ざっくりと言えば憲法・法律の効力を停止し、行政権・司法権を軍隊の指揮下に移行することです。主に戦時下や自然災害もしくは過激な暴動等の緊急事態に対して兵力をもってえ対処するための方法です。
すなわち、戒厳令は緊急事態に出てくる文言であり、平時には起こらないことなのです。
なぜ発令したのか?
尹錫悦大統領は、
「韓国の野党の中に北朝鮮に追従して、反国家活動を行っている」
と、同会見で語っています。
つまりは、北朝鮮の勢力が韓国を蝕んでいることを重く見ての発令だったと主張しています。
韓国で戒厳令が宣言されたのは、1979年以来で、1987年の民主化以降は初めてのことでした。
実際にニュースなどの映像を見てみますと、兵士が主要な建物を包囲。
抗議する市民たちを牽制して、非常に物々しい雰囲気を醸し出していました。
失敗?原因はクーデター?
しかし、国会はこの非常戒厳令の解除を要求。
憲法の規定に従い尹大統領は戒厳令を解除。
事態は6時間で終息。
Wikipediaなどでは「無血のまま」と記されていますが、この騒動で一名の負傷者が出ました。
しかも、軍部は国会の閉鎖や議員の逮捕なども行おうとしていたことから、事実上の軍事力を用いたクーデターであるとも言われています。
通常、クーデターと言えば権力に対する暴力での革命などが思い浮かびます。
しかし、今回は大統領によるクーデター……いまいちピンと来ませんよね?
少しばかり、知識を借りましょう。
識者が解説!尹錫悦大統領政権の課題!!
NHKは韓国政治に詳しい神戸大学は木村教授に話しを聞きました。
韓国に詳しい木村教授でさえも、今回の非常戒厳令は驚いたとしています。
その上で、
「会見を見ると尹錫悦大統領は本心から自分の権力、そして韓国の政治体制に大きな脅威が迫っていると考えていたであろう。その背景に北朝鮮がいて、ここで何もしていないと大韓民国そのものが北朝鮮に屈服してしまうことになる。そう思っていたのであろう」
としています。
では、そもそも尹錫悦大統領はなぜそこまで追い込まれていたのでしょうか?
尹錫悦大統領の不人気
尹錫悦大統領は2022年5月に就任。
しかし、当時から国会では与党は少数派でした。
完全にねじれ国会となってからは、さらに人気は下落。
日韓関係などを始めとして、外交に力を注いでいましたが、それも国会では野党が力を持っていたためであると見られます。
しかし、その外交でも日本に対する譲歩の姿勢が不満を招き……
4月の国会議員選挙では与党が惨敗……
韓国国内の経済状態も芳しくない……
さらに、金建希夫人のスキャンダル……
数々の問題によって、支持率は20%以下にまで下がっていました。
あらゆる場面で劣勢に立たされている尹錫悦大統領は、最後の手段として戒厳令に踏み込んだと木村教授は見ています。
戒厳令への抵抗!
さて、話しをまとめると大統領の暴走にすら思える今回の騒動。
国内では当然ですが大混乱となりました。
国会を封鎖及び野党の議員の拘束も、大統領の宣言の中に入っていました。
そこで、野党の民主党代表李在明代表は国民に国会へと集まるように呼びかけを行いました。
「尹錫悦はもはや韓国の大統領ではない」
こう宣言。
国会には事態を知った与野党の議員。
そして、多くの市民が集まりました。
国会前は警察により封鎖されていましたが、集まった抵抗者たちは激しく衝突。
さらに、特殊部隊が国会内に突入しましたが、議員らはバリケードを築き消火器を噴射するなど抵抗を続けました。
そして戒厳令に反発した市民が4000人近く集結。
「戒厳令を解除しろ」
「尹錫悦を逮捕しろ」
とシュプレヒコールを上げて、一時的に兵士たちと揉み合いになりました。
この混乱の中、野党の広報官を務めていた女性の勇気ある行動が讃えられました。
なんと、兵士のライフルを必死に掴み制止しようとしていたのです!!
この女性の姿は写真に撮られ、抵抗のシンボルとなりました。
これらの激しい抵抗により、国会が軍部に支配されるという事態は避けられましたが、庁舎などに戒厳軍が占拠して当直職員の携帯電話を押収するなどの一時的な成功もありました。
結局、翌日に国会で与野党の議員全員一致で『戒厳令の解除要求』が可決され、尹錫悦大統領の非常戒厳令宣言の6時間後に解除となりました。
今後の尹錫悦大統領は!?
野党が尹錫悦大統領への弾劾訴追案が、今日にも採決される見通しです。
さらに、韓国の大検察(最高検察庁)は6日、尹錫悦大統領の『非常戒厳令宣言を巡る事件』を捜査するために、特別捜査本部を設置しました。
事件の関係者には軍部の高官が多数含まれることから、軍検察からも人員が派遣。
捜査本部には検察から30名。
軍の検察機関からは10名ほどが加わり、合同捜査が行われる予定です。
検察が特別捜査本部を設置したのは2016年朴槿恵政権下での崔順実氏による国政介入事件以来の8年ぶりです。
さらには、与党の『国民の力』代表は尹錫悦大統領は正常な職務遂行が不可能であると指摘。
「尹大統領の早期退陣は不可避である」
と述べました。
まとめ
尹錫悦大統領は国民に向けて謝罪し、自分の今後は所属する党に一任すると表明しました。
私の私見としては、今回のような騒動は国民のためではない行動だったと思います。
大統領のみならず、我が国でも政治家の方々は国民の支持を集めて当選し、その職に就いています。
逆を返せば、支持されなければ政治家としては失格であると言うこと。
そして、支持を集めるために掲げた『マニフェスト』は守るべきです。
何が言いたいかというと、すべからく国民のために働いて欲しいからこそ、政治家になったのでしょうとと問いたいのです。
その視点から見てみると、非常戒厳令宣言はとても迷惑でしかなく、反発をした市民以外にも多くの国民が【不安】を感じたと思います。
自分の国に何が起こっているのか?
ネットを見てみてもよく分からない。
自分たちを護るはずの憲法すらも一時的に停止される恐れすらある。
たとえ、6時間であっても恐怖を感じたに違いありません。
国民を私心からの行動で不安にさせた責任、それはきっと重いはず。
尹錫悦大統領も、自分の過ちを認め、国民のための政治を行ってほしいものです。
KAI