『#財務省解体』『#ザイム真理教』
このような投稿が、X(旧Twitter)で約20000件発信された。
財務省へのネットユーザーによる批判は以前から多かったものの、今回はかなりヒートアップしていると言えるでしょう。
なにが起こったのか?
それは、先の衆議院選挙で注目された『103万の壁撤廃』に関係しています。
まずは、財務省とはどのような組織なのか?
【財務省】
日本の行政機関のひとつであり、健全財政・公平な課税・国庫の管理など、まとめると国のお金を管理する仕事をしている組織です。
ネットユーザーにはかなり前から、敵対視されていたと言えます。
なぜかと言えば、その立場が関わっています。
お金の管理――――と書きましたが、その実態としては別組織や議員立法に対し、越権行為とも言える干渉や支配行為があったからです。
必要な予算の配分にも大きく関わっている都合上、各省庁や議員は財務省の機嫌を損ねないようにしないといけなくなってしまう。
その結果、財務省は本来の領域を超える力を手にしている……そうした姿が、少なからず批判を浴びる原因となっていたのでしょう。
さらには【森友学園問題】では文書の改ざんなどを行い、責任を転嫁し続け、最終的に職員が自殺に追い込まれてしまうという最悪の結末になりました。
亡くなった職員の妻が裁判を行い、文書の提出を求めると所謂【黒塗り文書】が送られた。
学園側と口裏を合わせ、記録などは組織的な隠蔽を図った――――
これらの行為は、政治に疎くてもかなり誠実さに欠けていると分かります。
国庫のお金とはすなわち『税金』です。
我々の税金が不透明な使われ方をしている……そう思われても仕方ないでしょう。
さて、では今回はなぜXでバッシングを受けているのか?
衆議院選挙で注目された、国民民主党の打ち出した政策【103万の壁撤廃案】に関係します。
いわゆる、課税対象となってしまう年間103万円を超える収入。
これにより正社員のみではなくパートタイムの方々も働き方を変える必要があり、かなり前から問題視されていました。
国民民主党の党首『玉木雄一郎』氏は自身のYouTubeや演説などでしきりに『103万の壁撤廃』について論じていました。
ロジックとしては103万の壁を撤廃することにより、我々国民の収入が増えるというものです。
これに対して各メディアや有識者は、顔をしかめています。
なぜか?
そこにこそ、財務省が関係しているのです。
103万の壁が撤廃されれば、当然、税収は減少します。
そうなると困るのは財務省です。
さらには与党である自民党も前向きではない。
財源はどうするのか?
その質問に対しては国民民主党は「与党が責任を持って議論するべき」としています。
しかし、果たして与党だけで収まるでしょうか?
懐事情が悪くなる財務省が確実に首を突っ込んでくる――――
実際に財務省は【103万の壁撤廃】に対して難色を示しています。
その抵抗が「そもそも我々の金だ。なぜ財務省に指図されなきゃいけないのか」という不満が爆発する要因になったと推測できます。
103万円――――月々に計算すると【1月約85000円】です。
多くの学生がアルバイトをしながら勉強している現在の日本では、そこから学費・生活費・交友費・家賃などを出すことになります。
もっと働けばいいのじゃないか……しかし、103万円を超えてしまうと所得税が発生します。
そして、学生の場合は親御さんが扶養控除を受けられなくなります。
結論として学生本人そして親御さんの両者の納税額が増えてしまう仕組みになっています。
それゆえに、パートタイムなどで働く方々は年間103万円を超えないように働き、時にはシフトを減らさざるを得ない事態が発生しています。
しかし、本音は「もっと働いて稼ぎたい」「シフトを増やしたい」などの声が聞こえます。
そもそも給料が必要だからこそ働いている……それなのに、収入が超えないように気をつけなくてはいけない……大きな矛盾があります。
私もかつて務めていた外食店で、年末が近くなると103万円に近づいたアルバイトの方々が「超えてしまうからシフトを入れられない」と働き控えが毎年起こっていました。
そんな矛盾と不公平を解消するべく、今回国民民主党が壁の撤廃を打ち出したのです。
ネットユーザーの不満が爆発したことにより、X(旧Twitter)では約20000件もの投稿が財務省の公式アカウントに集中。
92%がネガティブな内容であり、ハッシュタグには『#財務省解体』や『#ザイム真理教』などの過激な怒りを表したものとなっています。
あまりの議論の過熱により国民民主党の党首『玉木雄一郎』氏は自身のXにて「冷静かつ建設的な議論」が大切であると呼びかけるほどの事態になりました。
ネットは一度火がつくと大火となる傾向がありますが、昨今ではインターネットと政治の関係性が変化しています。
都知事選ではネット戦略を駆使した石丸氏が大躍進して二位となりました。
海外に目を向けると、アメリカの大統領選挙ではトランプ氏がSNSを使って対抗馬を攻撃。支持者も、陰謀論者を巻き込み壮大な『トランプワールド』の形成を図りました。
ネットの意見が政治の意見を変える時代――――とも言っても過言ではありません。
ただし、一方で議論が真っ二つに分かれる、いわゆる【二極化】が発生しやすいとも指摘されています。
アメリカの大統領選挙で印象的なインタビューがあります。
「街は分断された。自分の本音を吐露できるのは、支持者の集会かネットくらいだ」
赤いトランプキャップを被った壮年の男性が語っていました。
世論が極論化してしまい、排他的な状態となり、やがてはネットの雰囲気が社会の分断へと繋がる……
そんなことになりかねません。
いずれにしても、根強い不満を財務省や与党がどう受け止めるのか?
単なるネットの戯言だと無視するのか?
注目です。